水木しげる ― 毎日殴られた兵隊は、ラバウルの村で「パウロ」と呼ばれた
「毎日殴られるんですよ」。平成22年のインタビューで、そう語った漫画家の水木しげるさん。当時の名は武良茂、ラバウルの島で、軍隊のいちばん下の兵隊でした。
その人が、同じ島の村では「パウロ」と呼ばれていたと、ある研究者の論文は書いています。軍が行くなと命じた村へ、この人はなぜ通い続けたのでしょうか。
昭和18年の秋、武良さんは第38師団の一員として、ニューブリテン島へ送られます。本人の回想では、中隊を運んだ船が、ラバウルにたどり着いた最後の輸送船でした。下の兵隊が入ってこない初年兵の日々を、本人の言葉と、同じ島にいた別の人たちの回想からたどります。
昭和19年4月末、バイエンの朝。小隊で生き残ったのは、武良さん一人でした。同じ年に、この人は左腕を失います。
昭和20年、ナマレの野戦病院に移った武良さんは、トライ族の人々の村に通うようになります。本人は村の暮らしを、「本当の人間の生活」と書きました。
ただ、村の人たちの側には別の話がありました。トライ族の人々の語りをまとめた英語の要約から、強制労働や、村を離れて隠れた日々の話もお伝えします。武良さんのいた村のことかどうかは、わかっていません。
戦争が終わり、本人は「現地除隊して真剣に住み着こうと考えたんです」と回想しています。本気で島に残ろうとした人は、なぜ帰りの船に乗ったのか。昭和21年3月の帰還と、村の人たちとの約束のその後までをたどります。
この動画は漫画の紹介ではなく、一人の兵士の日々をたどるものです。水木さんの漫画の絵は使っていません。
ご家族やご親戚から、ラバウルや南方でのお話を聞いたことはありますか。覚えていらっしゃることがあれば、お聞かせください。(個人情報はコメントに書かないでください)
【目次】
00:00 はじめに
01:19 第1章 静かな夜の手記
03:19 第2章 最後の輸送船
05:43 第3章 毎日殴られる
07:37 第4章 オウムの朝
09:25 第5章 左腕
10:39 第6章 「パウロ」と呼ばれた村
14:22 第7章 同じ島の、別の話
18:18 第8章 帰るか、残るか
21:17 結び
※この動画は、下記の資料をもとに構成しています。本人の著書(『水木しげるのラバウル戦記』『昭和史』『夢先案内猫』など)は、まだ直接読んでいません。本人の言葉や著書の内容は、下記の記事と論文に引かれたもの、ラジオ放送の字幕、英語に訳された聞き取りによります。放送の字幕から拾った部分は、音声を聞き直して確かめてはいません。「パウロ」という呼び名は小島秋良さんの論文によるもので、資料によっては「Paul」「パウル」と書かれています。
【参考文献】
・小島秋良「水木しげるの描いた「天国」――戦争が生んだトライ族との交流」『跨境 日本語文学研究』18(1)、2024年 https://doi.org/10.22628/bcjjl.2024.18.1.113
・本間光徳「水木しげるの戦い―戦争観と天皇観の超克―」『日本研究センター教育研究年報』第8号、2019年 https://www.iucjapan.org/pdf/nenpou2019_Ho...
・週刊朝日 2009年2月13日号「昭和から遺言」水木しげるさんインタビュー(AERA dot. 再掲、2015年)https://dot.asahi.com/articles/-/95028
・NHK「100年ラジオ」2025年8月(文化講演会「私の見た妖怪」1984年の音声と著書の朗読を含む。YouTube の自動字幕で参照) • 📻2024.8.3, 水木しげる『戦争と妖怪』〜伊集院光・100年ラヂオ(NHK FM)
・Zack Davisson「Mizuki Shigeru in Rabaul」2013年(英訳の聞き取りと『昭和史』英訳者の文章)https://hyakumonogatari.com/2013/05/20/miz...
・Tanaka Hiromi「Japanese forces in post-surrender Rabaul」Chapter 7(英訳 Steven Bullard、Inoue Akemi)https://revfrankhughesjr.org/images/JAP_FO...
・PARADISEC TD1-P02776「Tolai Texts (Rakunai)」公開の要約(Steven Gagau、2017年。録音そのものは聞いていません)https://catalog.paradisec.org.au/repositor...
・NPR、2018年7月7日 https://www.npr.org/2018/07/07/625296608/s...
・神奈川新聞、2015年9月8日(下里安太郎さんの回想)https://www.kanaloco.jp/news/social/articl...
・山崎英祐「ラバウル:地下壕の編集局 陣中新聞を発行」日本記者クラブ、1995年8月 https://www.jnpc.or.jp/journal/interviews/...
・サガテレビ、2023年8月9日(平原篤さんの証言)https://www.sagatv.co.jp/news/archives/202...
・厚生労働省 報道発表資料(しょうけい館 平成29年春の企画展)https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappy...
【画像の出典】
写真、古い地図、版画は Wikimedia Commons で公開されているものです。次の提供元や撮影者のもので、パブリックドメイン(1点は CC0)の表示があります。米海軍歴史遺産司令部、米海軍国立航空博物館、米海軍水路部、米陸軍航空軍(国立米空軍博物館、HyperWar)、米国政府資料(HyperWar)、米国立公文書館、米陸軍軍事史センター、帝国戦争博物館、オーストラリア国立公文書館、オーストラリア戦争記念館、豪海軍兵士の撮影(1918年頃)、George Brown(1908年)、Joachim von Pfeil(1899年)、撮影者不明(1913年)、Deutsches Kolonial-Lexikon(1910年頃の写真)、Andrees Handatlas(1912年)、作者不詳の絵葉書(大阪、1933年)。原出所は、Commons の表示によるものを含み、すべてを確かめきれてはいません。
トライ族の人々の写真は、戦前のものです(年を画面に表示)。動画の中の出来事を写したものではありません。
次の写真はクリエイティブ・コモンズのライセンスにより使用し、切り抜きと動きを加えています。サムネイルにも使っています。
・「Shigeru Mura 201011」大臣官房人事課 文部科学省 / CC BY 4.0 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sh...
地図のうち8点は、米陸軍と米海兵隊の公開資料や座標をもとに、このチャンネルで作った略図です。文字のカードも、このチャンネルで作りました。
ナレーション:合成音声
VOICEVOX:麒ヶ島宗麟
BGM:2つの世界、2つの夏 / 蒲鉾さちこ(OpenTracks(旧DOVA-SYNDROME))
内容に誤りがありましたら、コメントでお知らせください。確認のうえ、概要欄と固定コメントに「訂正」として記します。
#水木しげる #ラバウル #戦記 #一兵士の戦記
コメント 読み込み中…