【感動する話】父の借金のせいで山奥の農家へ嫁がされた私。私「畑を手伝います」夫「じゃあ別の仕事を頼んでもいい?」翌日、夫に連れられフランスへ→夫の正体を知った姉と母が半狂乱に【泣ける話・いい話・朗読】
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【本日のお話】
男「マダム。今の言葉をもう一度だけ、皆の前で言ってもらえませんか」
私の前に立っていたのは白い調理服を着た大柄な男の人だった。
襟のところに小さな金色の刺繍が入っている。
その人が何を言ったのか私には分からなかった。
横にいた通訳の女性が少し遅れて日本語にしてくれた。
天井の高い石造りの広間だった。
長いテーブルに白い皿がずらりと並んでいる。
皿の真ん中には私の知っている野菜が薄く切って盛りつけてあった。
会場にいた200人近い人が一斉にこちらを向いた。
ほとんどが調理服を着ている。
私は日本語しか話せない。
料理の資格も持っていない。
人前で話したこともない。
3日前、私は岐阜の山の中にいた。
泥のついた長靴が並ぶ玄関を出て、軽トラの助手席に乗ろうとしていた。
父の残した7000万円の借金のかたに嫁がされた家で、せめて畑仕事くらいは覚えようと思っていた。
それがどうして、パリのこんな場所で大勢の料理人にマイクを向けられているのか。
自分でもまだ分かっていなかった。
夫は私の斜め後ろに立っていた。
山にいたときとは違って、きちんとしたスーツを着ていた。
私と目が合うと、小さく頷いた。
急かすでもなく、ただ待っている顔だった。
私は皿の上のかぶをもう一度見た。
それから、さっき言ったのと同じ言葉をもう一度口にした。
この一言が、私を「誰かの代わり」ではない場所へ連れていくことになるとは、この時の私はまだ知らなかった。
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